私の意志で作り出した光の粒は己の仕事はもう既に分かっているようで、ゼノの傍に移動すると円を描くようにその場で飛んでみせた。


「もしその光の粒が赤く光るまでに私がここに戻ってこなかったら、光の粒に向かってこう言って欲しいの。『道しるべを灯せ、迷い子の糸に』って。この魔法は見えない魔法の糸で私と光の粒を繋ぐ魔法で、その言葉を言ってくれれば私は強制的に引き戻されるから」


よく幼い頃に同じ魔法を母様にこっそりかけられていて、行くとこ行くとこで迷子になった私を連れ戻していたっけ。


迷子にならないための秘密の魔法が、こんな大人になってからしかも魔窟を探索するのに使うなんて思ってもみなかった。


まあ、落ちこぼれには丁度いい魔法なんじゃない?


皮肉にも自分自身を笑ってやると、さっきまでの恐怖心は何処へやら。


最初から勝てない相手に挑もうとしているわけじゃないことぐらい分かりきっていたのに、何を今更怯えていたんだろう。


約束を果たすために私はただ動くだけ、それだけでいい。