咀嚼(そしゃく)したリンゴを飲み込むと、のどぼとけが上下したので確かに男の人なんだと分かった。


 それでも、その美しさは性別を超えていて……。



 ああ、この人が魔女なんだ。



 自然と、そう理解した。


 その美しさに、その妖艶さに目を奪われていると、彼の瞳がわたしを捉える。

「っ!」

 妖しい眼差しは魔力でも帯びているかのようにわたしを拘束してしまう。

 彼が何かをしたわけじゃないのに、動けなくなってしまった。


 ドクンドクンと心臓が大きく鳴り響き、魔女の行動1つ1つから目が離せない。


 リンゴの果汁でも残っていたのだろうか。

 唇を舐めて軽く指先で拭う姿にドキリとする。


 そんな彼の瞳が軽く見開かれた後、細められた。


 (なま)めかしく濡れた唇が開き、思ったよりも低い声が言葉を紡ぐ。


「何で、お前がここにいる?」

「っえ?……あ……?」


 まるでわたしのことを知っているかのような言い方に戸惑う。


 知り合いにこんな人いたっけ?

 こんな美人、知ってたら忘れないと思うけど……。