他のやつよりは粘って何度も様々なものを持ってきていたな。


 それでもやっぱり興味持てるものが無くて、眞白の用事もそろそろ終わりそうだという事で次で最後、となった。

 だが、そうして持って来たのが何の変哲もないリンゴだとは……。


『真っ赤で美味しそうでしょ? 欲しいと思わない?』

 とか、自慢げに言うから逆に呆気に取られた。

 そのとき、改めてちゃんと雪華の顔を見たんだ。


 色んなものを探し回って、持っているリンゴみたいに真っ赤な顔をした雪華。

 思えば、俺のためにここまで走り回ったやつがいただろうか?


 彼女はムキになっていただけかも知れない。

 だが、俺のためにここまで一生懸命になってくれた雪華を愛しいと思ったんだ。


 愛しくて、可愛くて、純粋に欲しいと思った。

 その真っ赤な頬が……笑みを浮かべる唇が……美味しそうだと思ったんだ。


 だから――。

『ああ、美味しそうだな』

 そう言って、俺はリンゴではなく雪華の頬を掴み、その美味しそうな唇を食べたんだ。

 柔らかなそれはどこか甘く感じて……。

 もっと欲しいと思った。


 その瞬間、俺にも欲しいものが出来たんだと嬉しくなった。