「……あの、そういえばずっと気になってたんですけど……」

 聞いていいものなのか分からなくて流していたけど、やっぱり気になったから。


「ギンって、眞白のお兄さんの名前なんですよね?」

「ん? ああ。そうだよ?」

「えっと……本名じゃないですよね、それ」

 7年前に一度聞いただけの名前。

 別れ際の出来事がぶっ飛びすぎていて、その一度聞いただけの名前は一緒にぶっ飛んでしまったのかちゃんと覚えていない。


 眞白も彼のことを話すときは上の兄さんとしか言わないし、そもそも彼のことはあまり話さなかった。

 ただ、《ギン》という名前じゃなかったことだけは分かる。

 なんていうか……色の名前が入っていたような記憶はあるんだけど、ギンではなかった気がする。


「あ、ユキちゃんあいつの本名知ってるんだ? 俺も知らないんだよね。あいつに『ギンって呼べ』って言われてるからそう呼んでるだけで」

 眞白も俺たちの前じゃあ『兄さん』としか言わないしさぁ、と笑いながら愚痴っぽく話された。


 やっぱり違うんだ。

 気になっていた疑問が解消されてちょっとスッキリする。


「そうだ。ひと段落ついたなら部屋案内するよ? 3階なら空いてる部屋あるし、丁度一昨日ハウスクリーニングが入ったばかりだから使えるっしょ」

 そう言って立ち上がる颯介さん。

 わたしは「お願いします」と返事をして、シャワールーム側のドアの近くに置いておいたバッグを取ろうとした。

 でもそのとき――。