シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する

 まあ、仕方ないから眞白に言って明日にでも持って来てもらおう。

 そう考えながらリビングに戻ると、その眞白の姿が無かった。


 ソファーには颯介さんが何かを飲みながらくつろいでいるし、壁際の画面の前では変わらず三つ子がキーボードを打っている。

 でもシャワールームに行く前までいたはずの眞白が見当たらない。


「あれ? 眞白は……」

 トイレにでも行ってるのかな? と思いつつ声に出すと、颯介さんが教えてくれた。


「ああ、眞白なら帰ったよ? 何か父親から電話が来たみたいで、血相変えて出ていった」

「は?」

「ギンへの説明は電話かメールでするから心配するなって言ってたから……まあ大丈夫だろ」

「……」

 もはや何と言えばいいのやら……。


 血相変えて出ていったってくらいだから何かあったんだろうけど……。

 でもわたしも家に行くわけにもいかないし……。

 とりあえず説明の方はちゃんとしてくれるって言うなら詳しいことは明日聞こう。


 それよりも……。


「えっと、すみません。何か食べるものありますか? 夕飯食べてなくて……」

「え? そうなの? あー何かあったかな? とりあえずキッチンにあるものなら食べて良いから、テキトーに探してみてよ」

 そう言って颯介さんは、わたしがダイニングに続くと予測していたドアを指差した。