シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する

 仕方ないのであるもので吟味し、大き目サイズのトレーナーとスエットパンツを選んだ。

 どっちも部屋着というよりは外出用に買ったものだけど、他に適当なものがなかった。


 とにかく着替えは用意できたので、3つあるシャワールームの一番奥を選んで入る。


 温かいシャワーを浴びて、体だけでなく心も温められていくような気がして少しホッとした。

 悲しさはまだあるし、どうしていいのかも分からない。

 それでもとりあえず、人心地ついたような気分にはなった。


 シャンプーやボディーソープまで備え付けてあったので、使わせてもらってしっかり洗う。

 体を拭いて着替えて、洗面台の方を少し探してみたらドライヤーを見つけたので使わせてもらった。


 そうしてサッパリしたわたしはお腹が空いてきたのを感じる。

 なんだかんだで8時も過ぎてると思う。

 正確な時間を知りたいと思っていつものようにスマホを探して気づいた。


「……スマホ、家に忘れて来ちゃった」

 帰ってすぐに台所に買い物袋を置いた。
 その時に確か一緒に置いてしまったんだっけ。

 思い出し、バカだ……と自分に突っ込む。

「充電器はしっかり持って来てるくせにスマホそのものを忘れてくるなんて……」

 呟き、いや、それどころじゃなかったんだけどね……と自分でフォローする。