シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する

 そっちにシャワールームがあるらしい。


 リビングにはもう一つ右側にドアがあるけれど、そっちはキッチンとかダイニングかな? と予測を立てる。

「じゃあ、とりあえずシャワーお借りします」

「ユキちゃん住人になるんだから、借りるじゃなくて使うねーでしょ?」

 おどけたように訂正する颯介さんにわたしは少し笑って「はい、使いますね」と言葉を変えた。


「眞白は? 寒くない? 大丈夫?」

 同じく冷たい雨に濡れてしまった眞白も寒いんじゃないかと聞いたけれど、「俺着替え持ってきてないし」と断られた。

「家に戻ってからちゃんとあったまるから、義姉さんは気にせずシャワー行ってきなよ」

「うん、分かった」

 そうしてわたしは奥のドアへと向かう。


 押し開けると、すぐ目の前には2か所蛇口のある大きめの洗面台がある。

 右側には3つのシャワールームと、奥の方にはバスルームっぽいところも見える。

 中に入って左側を見ると、そっちはランドリー室っぽい。

 洗濯機や乾燥機が見えた。


 新しそうとは思ったけれど、設備も結構充実してるみたい。


 まずは着替えを準備しようと思ってバッグの中を見て、しまったと思う。

 パジャマとか持ってきてない。

 下着を持ってこないなんてミスはしてなかったけれど、寝るときに着れるようなものを持ってきていなかった。