シュヴァルツ・アプフェル～黒果～魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する

　訝しんで見上げるわたしにハッとした眞白は、取り繕うように理由を口にした。


「ほら、金多兄さんには優姫さんがいるだろ？　変に誤解されかねないし」

「……うん」

　明らかに本当の理由は別にありそうだったけれど、誤解されそうというのも納得のいくものだったからとりあえず頷く。


「とにかく落ち着いてくれよ。義姉さんが心配しているようなことにならないように、俺から説明するつもりだし」

「……そっか」

　眞白の言葉に力を抜く。

　いくら総長と呼ばれるような人でも弟の説明ならちゃんと聞くだろうし、事情を知っておいて無理矢理ものにする、なんて展開にはならないだろう。

　少なくとも記憶にある彼はそこまでひどい人とは思えなかったし。


「んーと……とにかく今日ここに泊まるのは確実なんだろ？　じゃあとりあえずシャワーでも浴びて体あっためてきたら？　タオルで拭いただけじゃあ風邪ひくだろ」

　話がついたと判断したのか、颯介さんがそう提案してくれた。


　確かにさっきから寒いなぁと思っていたから正直その提案はありがたい。

「そうですね。使わせてもらっていいですか？」

「どうぞどうぞ」

　颯介さんはそう言って奥の方にあるドアを差した。