シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する

「それにしても……」
「ギンさんが魔女じゃなくて白雪姫だったとは……」
「まさかまさかだった」

「は? 何言ってんだお前ら」

 思わずといった様子で突っ込むシロガネに応えるように、三つ子は続ける。


「ガラスのケースに入ってたってところもそうだけど」
「名前にもちゃんと入ってた」
「ユキちゃんが本名呼んでた時点で気づけたはずなのに……盲点」

「え? シロガネのどこに白雪って入ってた?」

 今度はわたしが疑問を口にする。


「白雪姫は本来直訳すると《雪のような白い姫》ってことになる」
「つまり、白雪って言うより雪白姫ってこと」
「で、ギンさんの本名が……」

「……ユキシロガネ……ああ、始めの読みがユキシロか」

 納得しつつも、正直どうでも良いと思う。

 別にわたしはそこまでシロガネを白雪姫になぞらえたいわけじゃないし。

 でも他のみんなは娯楽の1つとして楽しんでいるのか、その話題を続けた。


「ギンさんが白雪姫ならユキちゃんは?」

「そりゃあ姫を助けに行ったんだから王子様じゃないか?」

 岸本くんの疑問に颯介さんが答える。


「じゃあ魔女は誰になるんだ?」

「金多兄さんかな? 立ち位置的に」

 そして伊刈くんの疑問には眞白が答えた。


 そんな感じで盛り上がる中、シロガネはため息を吐いて「どうでもいいわ」とわたしの手を引く。

 そのまま今度こそ2人でリビングを後にした。