「なんで? わたし、桔梗さんとは会ったこともないのに……」

「亡くなる前に一度だけお前のことを話したことがある。だからだろ」

 キョウがわたしのことを知っていたのもそのせいだ、と言われてそういうことかと納得する。


 でも、それでもシロガネにはないのにどうしてわたしに? という疑問はなくならない。

「まあ、読んでみろよ」

 うながされて開封してみる。

 何が書かれているのかと少し身構えたけれど、書かれていたのはたった一文。


 それを見て、わたしは思わずクスリと笑ってしまった。

「なんだよ? 何が書いてあった?」

 聞いて来るシロガネに「ヒミツ」と答えて手紙を封筒に戻す。


 そして同じく手紙を読んだ2人を見た。

 どちらも声を押し殺しているけれど涙を流している。

 特に金多くんなんて号泣と言ってもいい。


 多分、2人にとって大事なことが書かれていたんだろう。

 わたし宛ての一文も、きっとシロガネのためにと書いたものだろうから。


(しろがね)を幸せにしてあげてください》


 それは、シロガネが求めるただ1人がわたしだから。

 だから、わたしならシロガネを幸せに出来るだろうと……そんな願いを込めた言葉。


 ただ、普通は男の方に言う言葉じゃ無いかな? と思ったら笑えてきちゃったんだ。

「桔梗さんって、面白い人だね」

 そんなわたしの感想を聞いてさらにおかしな顔をするシロガネ。

 そんな彼も、とても愛しいと思った。