シュヴァルツ・アプフェル～黒果～魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する

「ウソ、一括消去なんて……シロ！　こんなことしたらあなたが欲しがっているものは手に入らないわよ!?」

　余裕がなくなり焦ったような声を出すキョウ。

　でもやっぱりその目は機械的で、感情を映さない。

　それが、彼女は結局のところ人ではないんだと……あくまでデジタルなのだと物語っているような気がした。


「それには対処してある。いいからお前はさっさと消えろ」

　睨むように告げるシロガネのそばに立つ。

　わたしも見届けよう。

　３人の母親である桔梗さんの、負の遺産であるキョウの最後を。


「いやよ、逃げるわ。……って、なにこれ。ブロックされてる？　逃げられない？」

　驚いたように目を見開いたキョウは、金多くんに視線を向ける。


「金多、母さんを助けて！」

「っ！」

　哀れみを誘うような表情を作ったキョウに、金多くんは瞳を揺らす。

　でも、そんな彼を優姫さんがギュッと抱きしめた。

　その腕に手をそえ、何かを決意した様子の金多くんは悲しそうな顔をしながらもキョウを拒絶する。


「優姫を……俺の大切な人を巻き込んでも平気なお前を助けることは出来ない。……お前は……っ！　母さんじゃ、ないっ！」

　最後は、認めたくなかった現実を受け入れるかのような叫び。

　金多くんは、優姫さんを選んだんだ。