「あ、はい。義姉さんです」

「はーん。あんたがユキちゃんね。話は聞いてるよ。タオル持ってきてやるから待ってな」

 眞白の紹介とも言えない説明だけで何故か納得した彼は、そう言ってさっき出てきた部屋に戻って行ってしまった。


「……ねえ、眞白?」

「何? 義姉さん?」

「ユキちゃんって、何?」

 多分わたしのことなんだろうけど、初対面の人にあんな愛称みたいな呼び方されるとは思わなかった。

 大体、話は聞いてるって言ってたけど……まさかこんな急に来たのに、ここに住まわせてもらうことを聞いてたってわけではないだろうし……。

 どういうこと? と少し不満を込めて聞いた。


「ああ……なんて説明すればいいのかな? とにかくここに住んでる人たちは義姉さんに会ったことはないけど、話には聞いててよく知ってるって状態なんだ」

「なにそれ? 眞白、他人に人のことベラベラ話さないでよね!」

 “よく知っている”というほどに何を話されたのか。
 そう考えるだけで不満は募る。


「え? いや、確かに俺も少しは話したけど……主に話してるのは兄さんだよ」

「にい、さん?」

 予測していなかった言葉に、わたしは動きを止めてしまう。