シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する

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「兄さん今日遅くなるの?」

 登校中の会話で当然のように出てきたシロガネの話。

 朝のことを話すと、そう聞き返された。


「うん、珍しいなって思って」

 そう普通に返したのに、眞白は意味深に「ふーん」と笑って言う。


「義姉さん、もしかして寂しい?」

「は!?」

 からかい交じりの言葉にちょっと大げさに反応してしまった。

 表に出したつもりはないのに、見透かされてしまったんだろうか。


「寂しいなら代わりに俺が一緒にいてあげようか? 同じベッドでは寝ないけど」

「同じベッドって……それは当たり前でしょう。っていうか、眞白じゃシロガネの代わりにならないでしょう」

 いくら実の兄弟でも。と呆れたけれど、眞白は尚も食いついて来る。


「えー? でも一緒にいれば寂しさは紛れるんじゃないかな?」

「……眞白」

 その様子に、共に過ごした8年の経験からピンときた。

「もしかして、寂しいのはわたしじゃなくて眞白の方なんじゃないの?」

「はは……バレた?」

 眞白は悪びれもなくそう言ってふわふわの自分の茶髪を撫でる。


「実は父さんが急な出張になって今日から日曜まで家にいないんだよ。1人でいるのも寂しいし、シェアハウスにいれば誰かしらいるし……いいよな?」

「まあ、部屋もひと部屋余ってるしいいとは思うけど……」