「悪かったよ。でもこれに懲りたら煽るようなこと言うのは控えろよ?……止められなくなるからな」

 チュッと優しい口づけが目じりに落とされる。

「ん……分かった……」

 嫌でも実感したし……。


 そうして今度は甘く優しい口づけがところどころに落とされる。

 頭を撫で、わたしの髪の毛をクルクルともてあそぶシロガネ。

 そんな彼を見ながら落ち着いてきたわたしは「それじゃあ」と口を開いた。


「そろそろわたし自分の部屋に行くね」

「……何で?」

「だって、やっぱり毎日一緒に寝るのはただれてると思うもの。……いくら恋人同士でも」

 そこはやっぱり自分で決めたことでもあるから曲げたくない。


「……まだ諦めてなかったのか」

 不満げに呟くシロガネにわたしは笑顔を向ける。

「だって、シロガネもそんなわたしが好きなんでしょう?」

「まあ、確かにお前のそういう信念を曲げないところは好きだけどな……」

 そこで一度言葉を切って妖しく誘うような笑みが向けられる。


「でも、俺のためにその信念を曲げてくれるっていうならそれも嬉しいけどな?」

「うっ」

 そんな風に言われたら、曲げたくなるじゃない……。


「そういうこと言うのはずるいよ……」

「ずるくてもいいさ。……お前がそばにいてくれるなら」

 そう言って、その美しい顔に甘く優しい笑みを浮かべるのだからなおさらずるいと思う。


 でも、そんなずるいシロガネも好きだなぁって思っちゃったから……。

 だから、今日はわたしが曲げてあげる。