義父さんのことは気になったけど、またさっきみたいな目で見られたら心を保てなくなりそうで……。

 だから、わたしは振り返りもせず眞白について行った。


 何も考えたくなくて、無言でひたすら足を動かす。

 前を歩く眞白の靴だけを見ながら、ついて行った。


「ん? ヤバ、降ってきたかな?」

 眞白がそう声を上げると、ポツリポツリと小粒な雨が降り始める。

「急ごう」

 そう言って小走りになった眞白にわたしも走ってついて行く。

 雨の量はどんどん多くなって、わたしの髪と制服を濡らしていった。


 秋の雨は冷たくて、心も体も冷えていく。

 そうなってから、わたしはやっと涙を流した。


 今なら雨で誤魔化せそうだから。

 今なら泣いてほてってしまう顔を冷たい雨が冷やしてくれそうだから。


 だから、苦しく辛い思いを洗い流すように泣いた。


 お母さんが再婚したのはわたしが9歳のころ。

 それから8年間、義父さんはちゃんと実の娘のようにわたしを育ててくれた。

 でも、その8年で(つちか)ってきた絆も、さっきの出来事で亀裂が入ってしまった。


 まだかろうじて壊れ切ってはいないけど、この亀裂は多分ずっと直ることはない。

 それがまた悲しくて、辛かった……。