時計塔で再会したときから、何度も彼に魅了の魔法をかけられたみたいになった。

 今思えば、なんてことはない。

 ただ、好きな人に惹かれて心奪われていただけ。


 わたしは初めから、恋の魔法にかかっていたんだ。


 それを思い出してから、ずっとドキドキしている。

 好きで、好きすぎて……思いが溢れて止まらない。


 皆もいるから何とかかろうじて抑えていたけれど、2人きりになった今は解放されてしまった。


「好きだよ、シロガネ……苦しいくらい好きすぎて、気持ちが溢れて止まらないの」

 もう、狂ってしまいそうなほどに。

「だから、この気持ちごとわたしのぜんぶを貰って?」


 懐が広いシロガネ。

 色んなものに興味がないくせに、来るものは拒まずしかも最後まで面倒を見る。

 そんなこの人がただ1つ求めるのがわたし。

 そんな大きな想いはやっぱり受け止めきれるか自信がない。


 だから、せめてわたしは彼が求めるままにぜんぶをあげたいと思った。

「わたしのすべてを……あなたにあげたいの」

「っ! 雪華」

 苦しそうにも聞こえる彼の呼び声。

 でも、彼を止める理性は外されたみたいだった。


 わたしに引き寄せられるように、シロガネは近付き……唇が触れる。