「義父さん? ちょっと!?」

 両肩を掴んで、のしかかるように体重を掛けられ畳の上に倒れこんでしまう。

 倒れたわたしの上に覆いかぶさるようになった義父さんを見上げると、いつもの優しい顔を悲しみに満ちた笑みに変え口を開いた。


「沙奈……つらいよ……」

「っ!」

 わたしを見ているのに、見えていない。

 今の義父さんは、わたしを通してお母さんを見ている。

 わたしという、娘を見ていない。


「とう、さ……」

「沙奈……慰めてくれ……」

 その瞬間、何かにビキリと亀裂が入ったような音がした。


「ただいまー。父さーん? 義姉さーん?」

 そこへ、場違いな程のんきな声が響く。

 眞白が帰って来たらしい。

 その足音が真っ直ぐこの部屋に来るのを、わたしは義父さんから目が離せない状態で待っていた。


「義姉さん? ――っ!」

 部屋に来た眞白の息をのむ音がハッキリ聞こえる。

 そしてすぐに近づいてきて、義父さんを突き飛ばすように押してわたしを助けてくれた。


「何やってるんだよ父さん!?」

 怒りと焦りを含んだ声にも、義父さんはろくに反応しない。

 突き飛ばされて倒れた状態のまま、「沙奈……」とお母さんの名前を口にするだけ。