「ッチ! まさかもう来やがったのか!?」

 そう焦りを滲ませた声でうろたえる杉浦だけれど、わたしを離そうとはしてくれなかった。

 この隙に逃げ出せればと思ったけれど、抜け出せそうにない。

 それでも何とか出来ないかと身じろぎをしていると、誰かが階段を上ってくる音が聞こえすぐにドアが開け放たれた。


 現れたのは、長い銀髪を揺らし、焦りと怒りをその瞳に宿した長身の男。

 彼は、わたしたちに目を留めた瞬間凄い勢いで距離を詰めた。


 杉浦に掴みかかったと思った次の瞬間には、柔道の投げ技のようにドアの方へ投げ飛ばす。

 圧し掛かられていた重さがフッとなくなり、目の前には美しい人の姿。


 キラキラと輝く銀髪が揺れる。

 ウルフアイズと呼ばれる目が獰猛な怒りに染まって杉浦を見つめていたと思ったら、その目を心配そうなものに変えてわたしを見下ろす。

 美しく妖艶な、わたしの魔女がそこにいた。