シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する

「あの男の女になってしまったことを恨めよ」

 そして、顔が近付いて来る。

 思わず逃げるようにそらすと、そのまま耳元に顔を寄せられた。

 生ぬるい息が気持ち悪い。


「あのお綺麗な顔をした男が、どんな風に女を抱くのか教えてくれよ」

「っ! だ、抱かれて、ない……」

「あ?」

 ここにきて初めて、わたしは声を上げた。


「わ、わたし、ギンに抱かれてないっ」

 思わず出た言葉だけれど、もしかしたらこれで興味を失ってくれるかもしれない。

 そんな淡い期待を込めて繰り返す。


「抱かれてない? あいつの女なのにか?」

 眉を寄せ、驚きを表す杉浦。

 でも、淡い期待は淡いままで儚く消える。

 杉浦の視線が「ん?」という声と共にわたしの胸元に留まった。


 そして、ニタリと笑みを浮かべる。

「抱かれたかどうかはともかく、こんな所有印を残すくらいだ。お前への執着が見て取れるってものだろう?」

「え?」

 所有印って……あ、昨日のキスマーク!?


 気づいたと同時に引きずられ、先ほどまで杉浦が座っていたソファーに投げ飛ばされた。

「うっぐぅ……」

 いくら柔らかいソファーの上でも、投げ飛ばされればどこかしら痛む。

 その痛みに耐えているうちに杉浦に圧し掛かられていた。