再び階段を下りながら、持っていたリンゴに乱暴にかじりつくギン。

 怒らせてしまっただろうか。

 もう一度ちゃんと謝りたいと思ったけれど、今は話しかけられるような雰囲気じゃなかった。


 螺旋階段も下りきったギンは、わたしの腕を引っ張ったまま真っ直ぐ管理室へと向かう。

 ためらいもなくドアを開けて入り、内側から鍵を閉めた。

 そして食べかけのリンゴを机の上に投げるように置くと、わたしをその胸に引き寄せる。


「え?」

 ギュウッと抱きしめられ、訳も分からないままドキドキと胸が高鳴る。

 今日のギンは銀髪の魔女でもあったから、その姿だけでも魅了されるというのに……。


 怒っていたんじゃないのかとか、あのキョウとは何なのかとか。

 色んな疑問も吹き飛んで、今のこの瞬間がずっと続けばいいと思うようになる。


 そんな、思考を奪われかけてしまっているわたしに、ギンは甘く妖しい響きを持つ声で命じた。

「雪華……とりあえず目閉じろ」

「え?」

「キスしたいから、閉じろ」

「え? どうして突然?」

 抱きしめられたのも驚きだったのに、どうしてキス?

 怒ってたんじゃなかったの?