でも、ギンのことを知りたいという気持ちも強くて……。

「……」

 わたしは答えを出せず押し黙った。


「まあ、どうするかは任せるよ。ただ――」

 そう言って近づいてきた金多くんは、片手をわたしの肩に軽く置き耳打ちするように顔を寄せて来る。

「さっきの俺の話、考えておいて?」

 そう言うと、彼はそのまま校舎の方へ歩いて行ってしまった。


 ……さっきの話って、金多くんの家に行くってやつ?

 流石に、あり得ないんだけど……。


 それだけはハッキリしているのに、さっきのアドバイスには心が揺れる。

 ギンは時計塔には来るなと言っていた。

 それは、彼の秘密があるから?

 金多くんの言う通り、時計塔を上ればそれが分かる?


 ギンのことを知りたいと思う欲求と、知らない方がいいのかもしれないという不安。

 揺れ動く心をそのままに、わたしは時計塔へと足を向けた。