シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する

「別に、いいんじゃないかな?」

「え……?」

「見てたなら分かってるだろ? 俺はさっき優姫と別れたし。……それに、誤解ってわけでもないから」

「は?」

 どういうこと?


 理解出来ないわたしに、金多くんははにかんで告げる。

「俺、雪華さんのこと女の子として気になってるから……」

 そうしてわずかに照れる様子は恋する男の子に見えなくもない。

 でも、わたしには異様に思えた。


 昨日まで優姫さんと仲良さげだった金多くん。

 それが突然別れるという話に。

 優姫さんの様子を見ても、何か大げんかしたとかではなく本当に突然のことなんだと思う。


 それだけでもおかしいと感じるのに、わたしを女の子として気になってる?

 あり得ない。

 昨日までそんなそぶりすら全く無かったっていうのに。


「……俺の言葉は信じられない?」

「っ、それは……」

 正直、信じられない。

 でも、それをハッキリ言うのはためらわれて……。


 どう答えたものかと悩んでいると、金多くんの方が質問を変えた。


「それとも、兄さんの方を信じたい?」

「……うん、信じたいよ」

 その質問には少し間を開けつつも頷く。