シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する

 驚きに言葉を口に出来ないでいると、金多くんは本気で心配そうな顔をして言い募る。

「犯罪に手を染めようとしてるんじゃないかと心配なんだ」

「っ!?」

 犯罪? ギンが?

 あり得ない、とハッキリ口にしたかった。

 でも、そこまで言えるほどわたしはあの人のことを良く知らない。


 ドクドクと嫌な感じに鼓動を早める心臓をおさえながら、揺れ動く心も押さえつける。


 ギンは犯罪に手を染めるようなことはしない。

 そんな人じゃない。

 信じたい。

 でも、信じきるだけの情報もなくて……。


 そんな風に動揺していると、金多くんが優しげな声で提案してきた。


「……雪華さんさえ良ければ、俺のところに来ないか?」

「え……?」

 突然の申し出にただ戸惑う。

 一体どういうつもりでそんなことを言っているのか。


「兄さんのそばにいるのは危険だよ。俺の家に来ればいい」

「で、でも、優姫さんに誤解されちゃうんじゃ……」

「誤解って?」

 キョトンと首をかしげる彼は本当に分からないといった様子で、それがまたわたしの中で戸惑いを生む。


「わたしと金多くんが付き合ってるんじゃないかって……思われちゃうんじゃないかな?」

 戸惑いながらもちゃんと伝える。

 そう促せば理解してくれると思って。


 なのに……。