シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する

 口にしてしまってから答えて良かったのかな? と思ったけれど、それで彼が昨日みたいに妖しい怖さを出すことはなかったから安心してそのまま会話を続ける。

「どういった経緯で兄さんのところにいるのかは知らないけれど……大丈夫?」

「え? 大丈夫って、どういう……」

 聞き返しながら、まさか無理矢理ものにされてないかとか心配されてる? と一瞬顔を赤くしかけたけれど、違ったみたい。


「兄さん、何か色々危険なことしてるみたいだからさ……巻き込まれてないかと思って」

「あ、そっちの……」

 恨みを買っている暴走族とか、そっちのことみたいだ。


「それは、まあ……怖いなっては思うけど、守ってくれてるみたいだし……」

 今のところ直接的な怖さは感じていない。

 だからとりあえずそんなフォローをしたんだけど……。


「守る? いや、兄さん自身が危険なことしてるって言ってるんだけど……」

「え?」

「ちらっと聞いた話だけど……なんか怪しいウイルスソフトを作ってるって」

「ウイルスソフト?」

 確かに、三つ子に何かのソフトを作らせてるみたいだったけど……。


「そう。ウイルス対策ソフトじゃなくて、ウイルスソフト」

 対策じゃなくてってことは、ウイルスそのものの方ってこと?