シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する

「言葉の通りだよ。別れよう、優姫」

「そんな突然……一体どうして?」

 今にも泣きそうな優姫さんは理由を問う。

 その問いに、金多くんは「どうしてだって?」と返し皮肉気に笑った。


「分かってるだろう? 君が兄さんの一番じゃないからだよ」

「っ!」

 息を詰まらせる優姫さん。

 わたしは思わず声が出そうになる自分の口をふさいだ。


 兄さんって、ギンのことでしょう?

 どうしてギンの話になるの?

 ギンの一番って?


 疑問の答えが分からないまま、彼らの話は続いて行く。


「兄さんと付き合ってたって言うから、君をもらったんだ。でも、君は兄さんの一番じゃあない」

「そ、んなの……金多には分からないでしょう?」

 今にも泣きそうだった優姫さんの顔が硬い表情を作る。

 探るようなその視線は、何を見極めようとしているのか……。


「そうだね。兄さんは一度欲しいものが出来たと教えてくれただけで、それが何なのかを教えてはくれなかった」

「だったら――」

「でも、それが優姫じゃないことだけは分かるよ?」

「っ!」


 2人は何を話しているんだろう?

 別れ話じゃなかったの?

 どうしてギンの一番がどうとかって話になるの?