シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する

 桔梗母さん――眞白やギンたちのお母さん。


 3年前に亡くなったその人のことをわたしはよく知らない。

 直接会ったことはないし、たまにこうやって眞白から話を聞くだけだ。


 でも、いい母親とは言えなかったんだろうなってのは眞白の話からだけでも分かる。

 母親、というよりは仕事人間で、それでいながら自分に似た長男のギンだけは猫可愛がりするような人だったみたい。

 それも母親としての可愛がり方とは違うから、好きなものを買い与えたり、ただ可愛いと愛でるだけみたいな……。

 とにかく、母親としては誰が見ても失格と言えるような人だったらしい。


 そんなことを考えて、そういえばと思い出す。

 7年前のギンと会ったあの日。
 あの日はその桔梗母さんに会いたいという眞白の付き添いで、彼のもとの家――というか、屋敷に行ったんだっけ。


 お母さんと接することで世の母親がどういうものか知ったという眞白は、桔梗母さんにも1つくらいは母親らしいところがあったかもしれないと記憶を美化するようになった。

 そうすると確かめたくて、会いたくなったと。

 義父さんとお母さんに内緒でこっそり2人だけで向かった屋敷。

 そこで初めてギンと出会った。


 桔梗母さんに会いに行くという眞白とは別行動をとり、その間わたしの相手をギンがしてくれたんだ。