シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する

「……マジなんだ……」

「え? 義姉さん本当に気づいてなかったの?……まあ、義母さんが支えてたしなぁ」

 眞白の言葉に、お母さんの姿が頭に浮かぶ。

 特別美人ってわけじゃなかったけれど、愛嬌があって人から好かれるタイプだった。


「ああ、そうだね。お母さんはいつも義父さんに寄り添ってたし……」

 そう口にして、思い出す。


 お母さんは娘のわたしから見てもできた人だったと思う。

 厳しい所もあったけれど、その代わり優しいときはうんと甘やかしてくれた。

 わたしが生まれてすぐに離婚してしまったから、ずっとシングルマザーでわたしを育ててくれて……。

 再婚してからは義父さんに寄り添って本当に仲のいい夫婦だったし、眞白にもしっかり母親として接してて……だからか、眞白もすぐにお母さんになついてたっけ。

 おっちょこちょいなところもあったけれど、それもお母さんの魅力だったのかもしれない。


 そんな風に思い出しながらしんみりしていると、眞白も思い出していたのかポツリと言葉をもらした。

「……本当に、沙奈義母さんは素敵な母親だったよ……」

 優しく、悲しく、懐かしむ表情。

 でも、次にはその表情が歪む。


「本当、桔梗母さんとは大違いだ」

「眞白……」

 吐き捨てるような言葉にわたしは何と言っていいのか分からなくなる。