シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する

 以前からわたしも心配していた通り、義父さんはかなり仕事をため込んでいたらしい。

 どうしても必要なことは済ましていると言っていたけれど、本当にギリギリの仕事しかしてこなかったんだとか。


 そしてちょうど昨日上司にしこたま怒られたとか。

 で、昨日も残業して遅くなったけれど、今朝も早く出て行ったと……。

 ため込んでいた仕事が終わるまでしばらくはそんな仕事漬けの毎日になるそうだ。


「…………」

 思わず、頭を抱えた。


「……ねえ、眞白」

「何?」

「義父さんって、そこまでダメダメな人だっけ?」

 お母さんが亡くなってからダメな感じになってきてるなぁとは思っていたけれど、この数日でダメさが一気に増している気がする。


「父さんは結構もとからダメダメだったよ? 義姉さん気づかなかったの?」

 普通にそう返され地味にショックを受ける。

 優しい義父さんはわたしにとって理想の父親で、見た目も結構カッコイイ方だから自慢の義父さんでもあった。

 そんな理想通りで自慢の義父さんが実はただのダメ親父とか……今まで(いだ)いていたものがガラガラと崩れていくような気分になる。