「眞白?」

 軽く名前を呼ぶ事で問い詰めると、仕方なさそうに話し出した。


「あー……実はさ、兄さんに言われたんだよね。俺がしっかり義姉さんを守れって」

「ギンに?」

「うん。兄さんや《黒銀》の人たちは側に付いて守るわけにはいかないから」

 そう言った眞白の話では、《黒銀》の人間がついているとそれだけでギンの特別な女だと見られかねないのだそうだ。

 でも姉弟である眞白ならそばにいても特別な事とは見られないだろうってことで、基本的に眞白がそばにつくことになったらしい。


「ちなみに他の《黒銀》の連中は、恨みを持ってる族を監視することで義姉さんを守ろうってことになったんだって」

「そう、なんだ……」

 ギンを慕ってついてきたという《黒銀》の人たち。

 何人いるのかは分からないけど、顔も知らない人たちがギンの意思に従ってわたしを守ろうとしてくれてる。


 あまり実感はわかないけれど、何だか申し訳ないような……こそばゆいような……。

 何とも言えない気分になった。


 そうして黙り込んだわたしに、眞白はハッキリ告げる。

「だから朝もちゃんと迎えに行くから、勝手に先に行かないでくれよ?」

「……うん、分かったよ」

 軽く困り笑顔で返事をしたわたしに、何を思ったのか眞白は「それにさー」と明るい声を出す。


「父さん今朝から早く家を出るようになったから、家に一人でいるのさみしーんだよな」

「え? 何でまた」

「聞いてよ義姉さん、ホント父さんってダメダメだから」

「へ?」


 眞白の話は、確かにダメダメだった。