背中から腕を回されている状態だったからギンの顔は見えなかった。

 だから起きているのも気づかなかったんだけど……。


「起きてるなら離してよ!」

 朝ごはんの準備しなきゃ、とジタバタするわたしにギンは「やだ」と駄々っ子のようなことを口にする。

 そうして体を起こした彼はわたしに覆いかぶさった。


 あれ? もしかしてこの状況……。


 昨日の朝と同じ状況に見える。

 まさかと思っていたら、寝起きの色気がダダ洩れなギンは目を細めニヤッと笑う。


「おはようのキスが先な? 雪華がしてくれねぇなら、俺からするから」

 言うが早いか、わたしの目は昨晩のように彼の大きな手に覆われ唇が奪われる。

「んんぅ」

 反論を許さない唇に少し怒りを覚えた。

 でも、ギンの甘く優しいキスはその怒りも溶かしてしまって……。


 流されちゃダメだとさっき思ったばかりだと言うのに、抵抗の意志が早くも消え失せる。

 早く、準備しなきゃ……。

 頭の片隅でそう思いながら、わたしはギンの唇に溺れた。



 ……そして案の定後悔する。


「あーもう! お弁当もうこの残りでいいや」

「義姉さーん? まだ出来てないのー?」

「催促するならせめて詰めてよ!」

 眞白に当たり散らしながらバタバタと支度をする羽目になった……。