惹かれて、魅せられて……わたしの方からあなたが欲しいと口にしてしまいそうなのを必死に耐えた。


 ゆっくりと、ギンの手がわたしの目を覆う。

 多分、この覆いはもういらない。

 なくても、きっとギンを怖がることはない。


 そう思って口を開くと、わたしが言葉を発するより先に塞がれてしまった。

「んっ」

 すぐに舌が入ってくるような欲に満ちたキス。

 でも、甘さのあるそのキスは苦しくなくて。


「っは……雪華……」

 わたしを求める声に、ゾクゾクと心が震える。


「んっ……ギン……」

 応えるように名を呼び、思う。


 やっぱり、ちゃんと名前を思い出したい。

 ギンの本当の名前。

 一度は聞いたはずの彼の名前。


 愛されるなら、彼の本当の名前を呼んで受け入れたい。

 だからやっぱり、まだ抱かれるわけにはいかない。


 ……ギン、あなたのことをもっと知りたいよ。


 甘く妖しいキスに酔いながら、わたしはそんな望みを抱いた。