「俺が思うのは、ふとした時に出る、優しさかなって」

「わかる。笑顔も柔らかいし、話し方も穏やかだよね」



共感しながら、これまでを振り返る。


第一印象は、体格と顔立ちから、かっこいいけどちょっぴり近寄りがたい感じ。

しかし、口を開けば、柔和で穏やかで、品があって。
言動1つ1つに、性格の良さが表れてるんだよね。



「醸し出すオーラがまず違うなって感じて、ソッコーで諦めたよ」

「いやいや早いよ! 樫尾くんも、素敵な笑顔を持ってるんだから、バンバン出していったら?」

「そうかな?」

「あぁそうだよそうだよ! この裏切り者!」



すると突然、どこからか怒りに満ちたような大きな声が聞こえた。

キョロキョロして声の出どころを探すと。



「零士先輩……⁉」

「零士さん!」



振り向いた先は、ちょうど真後ろ。

校舎の窓から、ムスッと頬を膨らませた零士先輩が恨めしそうな顔で睨んでいた。



「郁海……お前、犬派だったのかよ!」

「っき、聞いてたんですか⁉」

「全部聞いてたよ!」