翌日の学校でも3人の名誉は揺らいでいなかった。


女性を助けて表彰された帰りにひったくり犯を捕まえるなんて、大人ってそうできることじゃない。


おまけに学校関係者がそれを目撃していたようで、テツヤとカツユキの足の速さに感動したらしい。


陸上部の顧問からも散々勧誘を受けて、2人は断ることで忙しかった。


「そうか、どうしてもダメか」


陸上部の顧問は無駄な脂肪がひとつもなく、よく日焼けをした若い教師だった。


まだ20代半ばだと聞いたことがある。


「ごめんなさい」


テツヤとカツユキは同時に頭を下げる。


ドリンクの効果がすでに切れていることはわかっている。


陸上部に入部したって成果は残せないということだ。


それでも顧問は簡単には諦めきれない様子だった。


豆粒ほどだったひったくり犯に追いついて、更には追い越してしまいそうなったほどの俊足だ。


そうそう簡単に諦められるわけもない。


うまく行けば高校受験の時に2人の武器にもなると考えているようだった。