陰キャの渡瀬くんは私だけに甘く咬みつく

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 バン!

 と、教室に入ってきたその人はあたしの机の上に思い切り手を着く。

 あたしもビックリしたけど、すぐ近くにいた花穂は目をまん丸にして驚いていた。


「ねえ、どうなってるの⁉︎ 昨日告白断ったんじゃなかったの⁉︎」

 怒り――というよりも焦っているような表情で叫んだのは椎菜さんだ。


 まあ、昨日のあの状況で断れなかったっていうのもおかしな話だよね。


「しかも何⁉︎ 渡瀬って人とあなたをかけて勝負する事になったとか。それこそどうなってるの⁉︎」

「あ、ははは……」

 それはあたしも聞きたい。

 どうしてそうなっちゃったんだろうね……。

 っていうか。


「話伝わるのはやいね……」

 颯くんがそういうことを言いふらすとは思えないんだけど……。


 と思っていたら、話が広まる原因はさっきの校門前での出来事だったらしい。

 まあそっか。
 あんな目立つ場所であんな目立つ行動してれば何あれどういう状況? ってなっちゃうよね。


「え? 何? そんな面白いことがあったの? って言うか渡瀬⁉︎」

 目をまん丸にしたままで話を聞いていた花穂が、驚きと喜色を込めた表情で聞いて来る。


「面白いって……花穂……」

 友達ならもうちょっと親身になってよ……。

 少し恨めしく思った。