「月見里! ……と、渡瀬……」

 はじめは嬉しそうに、次いであからさまに嫌そうな顔になる颯くん。

「あ、おはよう颯くん」

 とりあえず普通にあいさつをすると、突然陽呂くんに腕を引かれた。


「え?」

 ポスン、と背中に陽呂くんの胸部分が当たったと思ったら肩に彼の顎が乗る。

 腕は軽く前に回されていて、丁度後ろから抱き締められるような格好になった。


「ひ、ひろ……渡瀬くん?」

 驚いて陽呂くんと呼びそうになったけれど、朝の校門前は人が多い。

 だから学校での呼び方にしたんだけれど……。


 こんな目立つ場所で抱きしめるとか、陽呂くんはもう隠すつもりとかないのかな?

 でもまだ気持ちを確かめ合ってはいないから、あたし達の関係は同級生としか言えないし……。


 って言うか、まずどうして今こんなことするの⁉


 嬉しいけど、それ以上に恥ずかしい!!


 表面上は軽い戸惑いしか見せなかったけれど、内心はかなりパニック状態だった。


「……渡瀬、月見里を離せ」

「……」

 こっちを睨むようにして颯くんが低い声で告げる。

 でも、陽呂くんは昨日と同じように無言だった。


 あたしの方からは見えないけれど、颯くんがかなり強めに睨んで来てるから多分陽呂くんも睨んでいるんだろう。