月原さんが改めて俺たちを見る。

 俺を見たあと、嬉しそうに目を細めて美夜を見た。


「……その子が渡瀬くんの“唯一”かな?」

「――っ!」

 俺はとっさに美夜を後ろに隠すように前へ出る。


 どうしてかは分からない。

 でも、直感で分かった。


 月原さんの狙いは美夜だってことが。


「陽呂くん?」

 後ろで不思議そうにしてる美夜だったけど、俺の様子になにかを察したらしい。

 ちゃんと、守られる様に後ろにいてくれた。


「間違いないみたいだね。……楽しみだよ」

 それはそれは嬉しそうに微笑む月原さん。

 そんな男を俺は敵認定した。


 どうして美夜なのかはわからない。

 美夜の何が目的なのかも。


 でも、これだけはハッキリしてる。

 美夜には手を出させない。

 成田にしろ、月原さんにしろ、それは変わらない。


 美夜は。

 美夜だけは、何があっても譲れない。