は？
　ちょっと待て？

　今先生なんて言った？


「あの……先生って……？」

　俺が聞きたいことは美夜も同じだったのか、戸惑う俺の代わりに聞いてくれた。


「ああ、こちら月原　秀弥先生。明日から教育実習で二週間うちのクラスを担当することになってるの」

「月原、秀弥……先生……」

　その名前を繰り返した美夜は驚きつつも、やっぱりという目をする。

　そして俺を見て確信したみたいだ。


　この人が俺を吸血鬼にした本人で、安藤さんが見つけたら知らせてほしいと言っていた人物だってことを。


「渡瀬くんとは彼が中学生のとき少し交流があって」

　岸本先生に説明する月原さんは、人好きのする笑みを浮かべている。

　見た目もいいから、そういう表情をすると気に入られやすいんだろう。

　すでに岸本先生は打ち解けているような雰囲気だった。


「そうなの？　知り合いがいるならやりやすいかもしれないわね。でも、ひいきするのはダメよ？」

「はい、分かってますよ」

　なんて笑いながら会話している。


「じゃあちょっと話でもしてる？　私書類とか取ってくるから」

「はい、ありがとうございます」

　そうして岸本先生は俺達を置いて一度職員室へと行ってしまった。