あの成田も、ちょっと人の話を聞かないところはあるけどちゃんと美夜の良いところを分かってた。

 美夜のどこを好きになったのか語ってた内容は、まさに美夜の良いところだったから……。


 でも、だからこそ嫌だった。

 美夜の良いところは俺だけが知ってればいい。

 こうやって他の男に知られて好かれてしまうなら尚更。


 そんな思いもあったから、多分勝負を断り切れなかった。

 美夜にちょっかいをかける男をぶちのめして、二度と近付かせない様に出来るチャンスかもって思ってしまったから……。


「ねぇ、大丈夫なの?」

 午後の授業も終えて、後は帰るだけとなったころ。

 先に教室を出た俺を美夜が追いかけてきた。


 いつもは俺が先に学校を出て、美夜が来るのを待ってる感じなのに。

 そういう約束をしてるわけじゃないけど、いつもそうやって一緒に帰ってる。


 一度美夜に「どうせ一緒に帰るなら教室から一緒でも良いんじゃない?」と言われたけど俺が拒否したんだ。

 だって、陰ヒロなんて呼ばれる様な俺と常に一緒に帰ってるなんて知られたら、美夜が嫌な思いをする事になるかも知れないじゃないか。


 それくらいなら外で美夜が来るのを待ってる方が良い。


 そして美夜はそんな俺の意思を尊重してくれてる。

 そういうところがまた好きなんだけど……。