陽呂くんのプライドとか、颯くんがあたしの言葉だけで納得してくれるのかとか、色々考えてしまう。

 そうしている間に颯くんの方がしびれを切らして言葉を重ねた。


「……渡瀬、月見里を離せよ」

「……嫌だ」

 今度は陽呂くんも声を出してくれる。


「……つまり、お前も月見里のこと好きってことだよな?」

「……」

 颯くんの確認の言葉に陽呂くんは何も言わない。


 言ってくれれば嬉しいのに……。

 あたしもしょんぼりしてしまって結局何も言えないでいると、颯くんは「分かった!」といら立ちを隠しもせずに大きな声で言った。


「確かお前も球技大会の種目卓球の個人戦だったよな? それで勝負といこうぜ」

「は?」

 何でそうなるの?


「中学で部活入ってたオレの方が有利かもしれないけど、好きな女がかかってるんだ。頑張れないなんてことはないよな?」

「……」

 それでも陽呂くんは睨むだけで何も言わない。


「……なんか言えよ。言わないってことは勝負受けるってことになるけど良いんだよな?」

「……お前には、渡さない」

「言うじゃないか。じゃあ、勝負だな」


 そうして、二人はあたしを挟んでにらみ合っていた。


 ……うん。
 なんか、あたしを賭けて勝負! みたいになっちゃったけどさ……。

 あたしの意志は?


 それを言いたいけど、二人の間に流れた緊迫した雰囲気に言葉を発することが出来なかった。