「そうだよ!」

 ハッキリ答えると、花穂は少し考えるそぶりを見せてポンッと手のひらをこぶしで叩く。

「颯くんのファンに呼び出されたらどうしよう⁉ とか?」

「は? 違うし。……っていうか、颯くんのファンって何?」


 颯くんはイケメンだし、それなりに人気があるのは知っていた。

 でも、ファンとなるような人までいるなんて知らない。


「え? いるんじゃないの? あれだけ人気のあるイケメンだし」

「……」

 どうやら本当にいるかどうかは分からないらしい。


「まあ、どっちにしろそういう悩みじゃないし……」

 力が抜けるような気分で肩を落とし、また陽呂くんのことをちゃんと考えようとしたときだった。

「美夜ー? 呼ばれてるよー」

 クラスの女子からそんな声をかけられたのは。


「え? 誰あれ?」

 視線を向けた先には三人ほどの知らない女子。

 ううん、見たことはある気がするから同級生ではあると思う。

 きっと別クラスで中学も違うところの子たちだ。


「何の用だろう?」

 立ち上がって疑問を口にすると、花穂が嫌にまじめな顔で言った。


「もしかして颯くんのファンなんじゃない?」

 あたしは「まさか~」と笑って彼女たちの元へ向かう。


 ……でも、そのまさかだったらしい。