初めて陽呂くんが跳んできたときは、冗談じゃなく心臓が止まるかと思った。

 そして無事に着地したのを見て腰を抜かしたんだっけ。

 しかもそのまま動けなくなったから、お姫様抱っこされてベッドに連れて行かれたんだっけ……。


 あ、思い出したら熱くなってきた。


「美夜、どーした?」

「え? ううん、なんでもない」

 首を横に振って返事をしたけれど、陽呂くんはわざわざ腰を曲げてあたしの顔を覗き込んでくる。


「……顔赤い。緊張してんの?」

「っ!」

 反射的に違うと言いそうになったけれど、緊張しているのも本当だからちょっと言葉に詰まった。


「……そりゃ、緊張はするよ」

 一年前のことを思い出したのは言わない。

 またお姫様抱っこしようかなんて言われたら今度は心臓が持たない。


 ただでさえ今もドキドキが治まってくれないのに。


「一年以上経つのに全然慣れないよな、美夜は」

 そう言った陽呂くんはあたしの手を取って引いてくれる。

 そのまま部屋の中にエスコートしてくれながら普通の調子で言うんだ。


「そんなところも可愛いけど」

 って……。