あたしはムッとして答えた。

「違うよ!」

 強めに言っても花穂のニヤニヤは収まらない。

 裏表のあまりない花穂は一直線で好ましいけれど、今みたいに思い込まれたときは厄介だな、って思った。


「本当に違うってば。あたしが考えてたのは――」

 言いかけて止まる。

 今考えてたのは陽呂くんのことで、あたしが好きなのも陽呂くんなんだって。

 言えたらいいのに……。


 せめて陽呂くんがあたしの事好きだって言ってくれれば……。

 そうすればあたしも好きだって伝えて、周りがどう思おうが付き合ってます! ってハッキリ宣言するのに……。


 いっそ、あたしから好きって告白する?

 陽呂くんは自分に自信がないタイプだし、あたしから言った方が良いのかな?


 でもあと半月ほどであたしの誕生日がくる。

 陽呂くんがあたしの心も体ももらうからって宣言した約束の日。


 ああいう風に言うってことは、多分陽呂くんの方から言おうと思ってるってことで……その前にあたしが言ったらもしかして陽呂くんのプライド傷つけちゃったりしないかな?


 うーん、とまた悩み出してしまう。


「……美夜? もしかして本当に何か悩んでる?」

 言葉を止めてうなりだしたあたしに、流石におかしいと思ったのか花穂はやっとからかい混じりの笑みを消した。