でもこんなの誰にも見せられるわけがない。

 だから結局のところ陽呂くんの自己満足だ。

 あたしは怒っても良いはず!


 ……なのに、どうしてかな?

 その独占欲が、嬉しいって思ってしまうのは。


 困ってしまったあたしは、先生が体温計を持って来てくれたこともあり陽呂くんとの会話をそのまま終わらせてしまった。


 その後は1時限分まるっと二人で保健室のお世話になり、6時限目の授業を受けるために教室に戻る。

 そのときになって、あたしは保健室で休んでいた事を後悔する羽目になった。


「で? どうなのよ? 颯くんと中学のときなにかあったの?」
「惚れられるエピソードとか何かあったんじゃないの?」

 主にクラスの女子からそんな質問ばかりされ、「何もないよ!」と否定してもニヤニヤ面白がられるだけ。

 男子は男子で。

「もう優勝したらとかいらねぇから付き合っちゃえば?」
「それか賭けるか!? 優勝して付き合うか、負けてフラれるか」

 なんて娯楽のような扱いになっていた。


「あたし、あの告白断ろうとしてて……」

「え? 何で? あんなイケメンに告白されるなんて中々ないでしょ? もったいない」

 花穂までそんなことを言う始末。


 あたしが断っても断らなくても、周囲がもうお祭り騒ぎで……。


 やっぱりすぐに断っておくんだった!!


 後悔は先に立たないって、よく言うよね……。