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 宿題を終えて、お母さんが作り置きしてくれている夕飯を食べて、お風呂に入る。

 そうやって一通りやることを終えると、あたしは二階の自分の部屋で暇つぶしをしていた。


 夜九時を過ぎたころ。

 ピロン、とSNSの通知の音がする。


《今から行く》

 その簡素なメッセージに、心臓がトクトクと早くなる。

 軽く深呼吸したあたしは、ベランダに続くカーテンと窓を開けて外に躍り出た。


 そうして見えるのはお隣のベランダ。

 丁度渡瀬くん――ううん、陽呂くんの部屋のベランダが真向かいにある。


 そこにはすでに陽呂くんの姿があった。

 お隣同士と言ってもベランダの距離は5メートルほど離れている。

 普通だったらここから移動なんて出来るわけがない。


 でも、陽呂くんはあたしに端によってと手でジェスチャーすると、片足をベランダのふちに乗せる。

 あたしがちゃんとベランダの端っこに行ったのを確認して、彼は勢いよくジャンプした。


 陽呂くんの長い手足が、高く()を描いて夜空を舞う。

 そして吸い込まれるようにあたしの部屋のベランダに降り立つ。