陰キャの渡瀬くんは私だけに甘く咬みつく

 丁度昼休みも中頃。

 お弁当を食べ終え、お菓子をつまみながら花穂と他愛もないおしゃべりをしていたときだった。

「……月見里、今ちょっといいか?」

 そう声を掛けて来たのは隣のクラスの男子だ。


(はやて)くん?」

 中学では同じクラスになったこともあり、それなりに知っている人。

 成田(なりた) 颯くん。

 高校に入ってから明るめの茶髪になった彼は、隣のクラスでは爽やかイケメンとしてちょっと有名だった。


 高校に入ってからはクラスも別になってしまったし、特に接点はなかったはずだけど……。

 突然話しかけてきて、何かあったのかな?


「大丈夫だけど、どうしたの?」

「ああ……あの、さ。オレ、球技大会で卓球の個人戦に出る事になったんだけど……」

「へ? あ、うん」

 突然球技大会の話をされて一瞬戸惑う。

 あたしと関係ある事なのかな?


「えっと、その……」

 颯くんは中々本題を口にしない。

 え? これ待たなきゃだめ?


 よくおっとりしていると言われるあたしだけれど、流石にずっとは待てない。

 でもあたしより、近くで見ていた花穂のほうが我慢できなかったみたいだ。


「もう! あんたハッキリしなさいよ!」

 立ち上がった花穂は、そう言って颯くんの背中をバシンッとたたいた。