陰キャの渡瀬くんは私だけに甘く咬みつく

 え? それで良いの?

 と思ったけれど。


「俺もそれが一番だと思うし……。手加減気をつけます」

 当の本人が理解の言葉を口にする。

 それであたしも理解した。


 あ、そっか。
 陽呂くん吸血鬼で身体能力高いから……。

 だから手加減が必要だし、出来ることなら一人の競技が望ましいってわけか。


 陽呂くん的にもその方が都合が良いのかもしれない。

 チームで組むの嫌だろうし。


「月見里さんは何に出るつもりなのかな?」

 陽呂くんの話が終わったからか、世間話の延長の様に安藤さんがあたしに質問する。


「あたしですか? んー無難にバレーか……友達とペアで卓球にするかってところですね」

 サッカーは男子だけだし、バスケはドリブルが苦手。
 あとソフトボールもあったけど、ルールがちょっと分からないところがあるからやらなくて済むなら避けたい。

 そんな話をして過ごしているうちにお昼近くなってきた。


「ああ、そろそろ時間ですね」

 そう言ってお(いとま)の挨拶をした安藤さんは、最後に真剣な表情でいつもの言葉を告げる。


「陽呂くん。いつも言うけれど、君を吸血鬼にした月原(つきはら) 秀弥(しゅうや)が現れたらすぐに知らせてくれよ?」

「分かってますよ」

 陽呂くんの返事に神妙に頷いた安藤さんは、今度こそ立ち上がって帰っていった。