球技大会も終わり、気持ちを伝えあって恋人同士になったあたしと陽呂くん。

 その翌日は本当に色々あった。



「え⁉ あれが昨日のイケメン⁉ ないわー」

 教室の入り口辺りで本日何度目かの同じようなセリフ。


 昨日素顔をさらした陽呂くんを目当てに、学年問わず色んな女子が教室に来たけれど大体が今みたいなセリフを言って教室に入ることなく帰っていく。


「はは……陰ヒロまた言われてやんの」

 からかうような、呆れたような声を出したのは花穂。

 でも、言われた本人は気にしていない。


「別に……俺のことは美夜だけが知ってればいいし」

 そう言った陽呂くんはいつもの陰キャな陽呂くん。

 素顔を知られてあたし以外の女子が近づかないかと心配だったけれど、普段の陽呂くんは今までと変わりないからそれも杞憂(きゆう)に終わった。


 今日ほど陽呂くんが陰キャで良かったと思った日はないかも知れない。

 おかげであたしは安心して陽呂くんと一緒にいられるから。


「……なんかココすっごく暑いわ。あたし椎菜のとこにでも行ってこよー」

 気を使ってなのか呆れたからなのか、花穂がそう言って隣のクラスへ行ってしまう。

 そうすると、陽呂くんが「そう言えば」と話し出した。