「んっ……」

 でも、美夜は抵抗らしい抵抗をしなくて……。

 だからついもっと求めてしまう。


 唇を舐めて、そのまま舌でこじ開ける。

「んんぅ⁉」

 でも美夜の舌を絡めとる前に、腕を叩かれて止めてとうったえられたので唇を離した。

 驚きと非難を込めた目に「残念」と笑って見せる。


「陽呂くん……やりすぎっ」

「だって、美夜が可愛すぎるから仕方ない」

「うぅぅ……」

「……それにしても、俺が美夜を独占したいって思ってるくらい美夜も俺を独占したいって思っててくれたんだ?」

 確認のように聞いてみたら、美夜は恥ずかしがりながらも「……そうだよ」と答えてくれる。


「じゃあ、俺達独占欲も両想いってことだな」

 なんて言ってみると、美夜は可愛い顔で「なにそれ」と笑う。


 ああ、もうホント可愛い。


 その気持ちのまままた唇を近付けようとすると、今度は美夜の手のひらが邪魔をした。

「……キスしたいんだけど?」

 不満を込めて呟くと、美夜は耳まで赤くしてポソリと話す。

「……ここでは、ダメ」

「ん?」

「帰ってから、ね?」

 そう上目遣いでおねだりをされてしまったら、彼氏としては叶えてやりたいと思うもの。


 俺は抱きしめていた腕を離し、代わりに美夜の左手に指を絡めた。

「え? あ……」

 恋人つなぎでつないだ手を引いて、歩き出す。


「続きは帰ってから、なんだよな?」

 聞くと、美夜は顔を赤くしてコクリと頷く。


 そうやって俺達は今度こそ恋人同士らしい帰路についた。