「ちょっ、美夜?」

「なんでもないから!」

 引き留める俺の声を振り払うように美夜は早歩きで先を行く。


 声だけじゃあ止まってくれないと分かった俺はちょっと強引だけど彼女の腕を掴んで引き寄せた。

「っあ!」

 後ろに引っ張られた美夜はそのまま俺の胸に当たる。

 それを逃がさない様に、俺は腕を回して美夜を抱きしめた。


「ひ、陽呂くん⁉ その、ここ外だし……人目が……」

「……住宅街差し掛かってるし、そんなに人はいないだろ?」

 恥ずかしがる美夜にそう言って俺は逃がさないと抱く腕に力を込めた。


「だいたい、逃げる美夜が悪い」

 あからさまに不貞腐(ふてくさ)れたような声を出す。

 そうすれば美夜は気にしてくれるから。


「うっ……」

 と言葉を詰まらせた美夜の耳に俺は甘く囁いた。


「なぁ美夜? さっき何て言ったんだ?」

「そ、れは……」

「美夜も俺を独占したいって聞こえたけど?」

「っっっ!⁉」

 ちょっと意地悪な聞き方だったかもしれない。

 でも、こうやって俺の言葉に一々反応する美夜が可愛くて……。

 だからついこんな聞き方をしてしまう。


「なあ? どうなの?」

 美夜の耳に唇が触れそうなくらい近づいて聞いた。

 そしたら――。