「……美夜?」

「……」

「みーや?」

「……」


 帰り道、スタスタと先を歩く俺の彼女。

 そう、彼女になったんだ……。

 そんな実感を胸に、俺は可愛い彼女に付いて行く。


「美夜、待てって……彼氏置いてく気?」

 ピタッ

 そう声を掛けた途端足を止めた美夜。


 軽く覗き込むと、頬が少し赤くなってるのが見える。

 そんな美夜の耳に顔を近付けて、何度言っても言いたりない言葉を紡いだ。


「美夜、好きだよ」

「っ!」

 途端弾かれた様に顔を上げた美夜は、赤い顔をして俺を睨んできた。


「あたしっ! 怒ってるんだよ⁉」

 そんな怒ってる姿も可愛くて仕方がないんだけど……。

 でも、それを言ったら本気の怒りを買いそうなので流石に口にはしなかった。


「あー……うん、ごめんな?」

 理由は分かっていたから、申し訳ない顔をして謝る。


 美夜が怒っているのは、みんなの前でキスしたことだろう。

 その後からこんな様子だったし、間違いない。


「謝るよりも、どうしてあんなことしたのか教えて!」

「どうしてって……」


 大勢が見ている前でキスをして、牽制する言葉を口にした。

 そんなの、理由なんて一つだろう?